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KK MAGAZINE


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INTERVIEW


「ウヴェ・ショルツを踊ること」

KK MAGAZINE vol.3 スペシャルインタビュー

2023.6

天才振付家ウヴェ・ショルツのミューズ、木村規予香インタビュー


KK INTERNATIONAL TOKYOのスクールパフォーマンス2023のオープニング作品、ウヴェ・ショルツの『アヴェ・ヴェルム・コルプス』を生徒達が踊る事について、どのような思いがあるのでしょうか。木村規予香先生にお聞きしました。

木村:『アヴェ ・ ヴェルム ・ コルプス』は、昨年、 ライプツィヒバレエ団でウヴェの作品を数多く踊ってきた(※1)Giovanni di Palmaを迎え、ワークショップを開催した作品です。ウヴェが亡くなった時にカンパニー全員で追悼の為に踊った作品でもあります。世の中には様々 なシチュエーションの人がいて、戦争や、災害や、皆それぞれです。身近な人への想いや追悼の気持ちを、 ダンサー達が自分の中での祈りを込めて踊ってほし い、表現者として、誰に、どこに、表現していくのか考えてほしいです。この作品を通じて、ただの公演ではなく世の中へのメッセージを込めたいと思い冒頭に踊ることにしました。楽曲がミサ曲なので、踊っている生徒や観客も何か感じるものがあるはずです。

(※1)Giovanni di Palma(ジョヴァンニ・ディ・パルマ)ウヴェ・ショルツによりライプツィヒバレエ団プリンシパルに抜擢され、木村規予香とウヴェの作品を踊る。レガシーとして国際的なバレエ団で作品の再演を果たしている。

「Ave Verum Corpus」Uwe Scholz ウヴェ・ショルツ、KK international Tokyo 5th summer performance 2023

KK international Tokyo「Ave Verum Corpus 」: Costume design by Park Jiyoung


規予香先生はライプツィヒバレエ団でウヴェの作品を多く主役として踊っています。天才と言われる世界的振付家とクリエイションする事は、ダンサ一人生にどのような影響を与えたのでしょうか?

木村:既存の作品を踊るのではなく、 誰かが作ったもの踊ることは自分が想像していなかった世界を見せてもらえます。それは登山ようなイメージで、 誰と登るか、 そしてそこまで登った者にしか見えない景色があるんです。振り付けを通して未知の世界に行く、それは振付家とダンサーお互いにです。ダンサーとして選ばれた喜びと責任があり、その上に立っていると感じてきました。最初にウヴェに会った時私は17歳で、カンパニーに入る前でした。彼の作り出すものは今まで見たことのない世界で、 彼の動き一つ一つが驚きでした。自分の出番ではない時もずっと見ていました、凄すぎて目が離せないんです。次々に溢れ出てくる、こういうのが天才なんだと、今までそう感動したのは彼だけです。それを踊る喜びがあり、そうだと言われるために踊り、 求められているものを考え努力し、そこから出てくるものの喜びがありました。お互いの関係を言葉にするなら感動を一緒に作る人です。そう言った感動と、ダンサーとしての喜びを経験出来た事が私のルーツになっています。


ジョン ・ クランコの演劇性の高い物語バレエ、バランシンの構築的で印象的なフォ ー メ ーション バレエを、ウヴェの作品から感じることができ、評価の高い素晴らしい作品がいくつもありますが、日本で上演されることは多くなく残念に思います。 ウヴェのレガシーと言われる規予香先生から、彼の作品の魅力をお聞きしたいです。

木村:彼の作品は、音楽をビジュアル化しています。ですので、 音楽家の人にも興味深く観てもらえると思いま す。ビジュアルがある事でより理解する事ができるのではないでしょうか。モ ーツァルトの大ミサや、ベルリオーズの幻想交響曲などだけでなく、コミカル な作品もウヴェは作っています。アメリカで学んだ影響があると思いますが、それもとても面白いです。シンプルにもっと観る機会があればいいなと、思います。難しい問題としては、ウヴェの作品の著作権が厳しい事です。なぜなら作品のステージングを許され ているのが、 レガシーが認める限られた人だからです。私はウヴェのレガシーとしての役割があります、 頑張って彼の作品を上演する機会を増やしていきたいです。今回生徒達が踊る「アヴェ ・ ヴェルム ・ コルプス」は難しいテクニックで踊る作品ではありません。構築的でシンプルなフォーメーション、音楽的な意味も含めて様々な場所で踊る事ができる作品で す。ドイツ大使館の後援も得て、踊る場所を広げていきたいですね。


発表会で作品を観させて頂き、ミニマルで完成された動きの美しさにとても感動しました。ぜひ多くの方に観て頂きたいですね。今後の公演も楽しみにしています。

Uwe Scholz ウヴェ・ショルツ

ドイツ、ユー ゲンハイム出身

振付家、芸術監督

http://www.scholzballets.com/

シュトゥットガルトでマリシア- ハイデに師事。バランシンのアメリカンバレエスクールで奨学生としても学ぶ。22歳でシュトゥットガルト・バレエの最初の常任振付師に任命される。26歳でチューリッヒバレエ団にヨーロッパのダンスアンサンブルの最年少ディレクターで就任。1991年から亡くなるまで、ライプツィヒバレエ団の首席振付師を務める。ライプツィヒの自由芸術アカデミーの創設メンバーでもある。シンフォニックバレエで最もよく知られていて、高い音楽性、芸術的感性と温かさ、大規模なアンサンブルでもエレガントで厳格なラインは、ドイツの国境を越えて有名になる。最も著名な作品には、モーツァルトの大ミサ曲、ウド・ツィンマーマンのパックス・ クエストオーサなどがある。

Mozart and others-The Great Mass-A Ballet by Uwe Scholz


KK INTERNATIONAL TOKYO

https://www.instagram.com/ballet.kkinternational/

公演情報

ドイツ大使館主催

「ドイツフェスティバル」のステージに今年も出演決定!

2024.11.3 @都立青山公園

https://www.deutschlandfest.com/

洗足学園フェスティバルのステージに出演します。詳細はWEBから

2024.11 @洗足学園

https://www.senzoku.ac.jp/SGF/

6th school performance

2025.8.12 @大井町きゅりあん

詳細は決まり次第お知らせします


文・インタビュー / 村上智子



INTERVIEW



木村規予香「舞台人は皆と一緒ではダメだから、自分はこうしたいと言い続けないといけない」

KK MAGAZINE vol.2 スペシャルインタビュー

2022.6.3


2022年夏のKK internationalの作品、バレエ界について。海外での経験から見えている今の子どもたちと若いダンサーへの思い。木村先生、山本先生、大石先生のインタビューから伝えたい事。

 
 
 

大石先生にはKK INTERNATIONAL 4th summer performanceにコンテンポラリー作品を作って頂いています。2週間ほどで振り写し、本番とお聞きしましたが、短い期間での制作はどのように進めるのでしょうか?

大石:重心を落とす、プリエだけ、とりあえずそれをします(笑)。

山本、木村:歩く、それだけでも本当は難しいよね。


コンテを踊るにはやはり経験が重要ですか?

山本:いいえ、そういうことでもなくて、クラシックをできる人はコンテもできる。クラシックでプリエを使えなかったらコンテでもできないから、同じことです。

木村:クラシックをできる子はコンテでも動けるよね。

山本:日本人はイメージ力が貧困な傾向があって、だからポーズで捉えようとしがちですね。

大石:アラベスクを形で捉えている、というか、気持ち的に何が起こっているのか、捉え方によって全く違うでしょう? 何の為にアラベスクをするのかを理解してないと。

木村:図面の線をただなぞって書いたみたいになってしまう。

山本:みなさん技術的には向上しているし見た目も綺麗になっていますよね。間違った情報で教える指導者も少なくなって。でも踊りなので踊ってないと評価してあげれない、下手とか上手とかの問題じゃなくて。 感じがいいとか、当たり前のことが出来ていないと。

木村:踊りが醸し出す雰囲気がすごく大切で、年齢的に小さくても感情が出せる人もいるんです。

 
 

型から入る教わり方に慣れてしまっているという事ですか?

山本:でもね、それがバレエの難しいところで、やはりバレエは型が重要です。歌舞伎か能かの違いと同じで、決まった型を学ぶから古き良き美しさがあります。それでもバレエやダンスは歴史や社会情勢と共に発展していくものです。こうあるべきだけではなくどんどん変わっていくものなのです。古典も世の中と共に変化するもので、古典を知ったうえで新しいものに変わっていく事と知らずに変えていく事では全く違うんです。共感できるテーマが大切で、今はコンテンポラリーという違う手段もあって、そう言う新しい物に携わる事が大事だと思います。 クラシックはクッキーの型にはめるようにだから、日本だと大人の真似事をできる器用な子が上に行きやすいです。でもクラシックだけではダメな時代、両方が必要ですね。コンテの動きはクラシックの妨げにならないしとても役に立つはずです。

大石:私も、コンテで自分の体がここまで動くんだと知ると、クラシックでも固まっていたところが伸びてくる、だからクラシックの技術も伸びました。

山本:最近の良いプロダクションは作品にコンテの要素がクラシックに入ってきているよね、音階も広いし、長さも、形式ばってないし、今まではクラシックではありえない動きが入るし。ダンサーの欲求として出てくる動きですよね、それって。

大石:子供達には色々な作品を是非見てほしいと思います。 ちゃんと感じるし、踊りにもっと自然な動きがあっていいと思うんです。

山本:日本人は正解を探して動いてしまいがちですね。

大石:人と違う事をするのが怖いのかもと思います。

山本:今の80%くらいの子供は隣の人を見ちゃいますね。子供といえる年齢は15歳くらいまでかな、それ以上になるとそういった本質を変える事が難しいですね。

 
 

日本の古典的な学校教育の問題点と同じに聞こえますね

木村:踊りは自己表現だから、自己主張してこない子は舞台で表現することが難しくなってきます。今の学校教育が皆と一緒にやりなさいだから。でも舞台人は皆と一緒ではダメだから、自分はこうしたいと言い続けないといけないのです。それなのに受け身の人が多いなと感じます。

山本:海外では舞台に出ると変わる人がいるよね。表現手段がそれだったりするから。できてない事を許すキャパシティがあるし、できない事も当たり前、日本はできる事を早くから求めすぎると思う。

大石:点を取る、上位に入るとか、そこを目指すとテクニックを上げる事になるし、でもそれはダンスではない。ダンスは自己表現だから、センテンスをどう発展させるか、言葉だから。でも真逆でオリンピック選手を育てているみたいな状態で、芸術とはかけ離れているなと感じるときもあります。自然に出てくる感情の動きを踊りに反映させないとパペットになってしまう。

山本:海外で長くやってこれたのは、成り切る楽しさがあるから、役者的要素は重要、楽しかったですね。

大石:私も楽しかったです。


以前山本先生が、テクニックは役に必要な結果とおっしゃっていたのですが、結果同じでも過程が違うと全く違うものになりますね

大石:踊りに自分の意思がないとそれを見る人の心は動かせないですよね。先生に踊りのをダメ出しをして頂いた時に、技術云々ではなく先生は何を言わんとしてダメなのか?を考えられる子が伸びる。そうでないと15歳を超えて、カンパニーに入ってから伸び悩んでしまいます。

木村:前にいる監督に見せたいものだったり、このダンサーのために作りたい、ダンサーが踊りたいって思うもの。先生や監督の指示を確実にやってくれる人じゃなくて、それをさらに2倍3倍に膨らませて返してくれるダンサー、自分のイマジネーションで消化して返してくれる、そういうダンサーがどんどん伸びますね。その人のイマジネーション、パーソナリティの影響が大きいです。

 
 

感性は自分で学んで変化していくものなのか?それとも、それは年齢と共に変化するものなのですか?
山本:海外の生徒は、自分を育てる、自分がこうしたいを徹底してるよね。先生に合わせようともしない。

大石、木村:そうそう(笑)。

山本:学校にも自分を育てる為に来ているし、人と違うとダメとか、人に合わせるとかないです。根本的に見た目から違うから、それが当たり前なんです。

木村:18歳になったら自立するって、ほとんどの子が思ってるのよ。自分は一人で生きていくんだって当たり前に思ってる、親もそう育ててるよね。自分でなんでもするって強いじゃない。

山本:バレエは舞台でひとりで踊るものではないから、早く海外に出て自立して欲しいって思うんです。

 
 

日本人の留学生は帰ってしまう人が多いと聞きますが、何故でしょうか?

木村:頑張りすぎてるのかなと思う、皆んな。

大石:海外での生活はとてもシビアで、なんでも自分で何とかしないといけないんです。 先生にまるでいないかのように、空気みたいに扱われることもあるし、それが悔しいから、「見てろよ!」って思う。 そういう気持ちが必要だと思いました、私は。

山本:僕?僕が言われたのは、「お気に入りにならない方が悪い。」「気に入られることも才能、踊りが気に入られるようになりなさい。」ということです。

木村:人が教えたいと思われる人間性になることが必要だと思いますね。バレエって粋なものなんです。何かが崩れてたり、余裕があったり。だから、遊びの要素も大きくて、今の子は一生懸命で遊びを知らないでしょ、遊びって工夫じゃない。サービス精神も必要だと思うし、何かを共有することが苦手な子が多いと思います。

山本:終わり(やめなさいとか)さえも言ってもらう事を待ってる子が多いです。

指示待ちではなく第6感を育ててほしいですね。

木村:あと美的感覚も小さい頃から育ててほしいです。

山本:センスがとても大事、根本的な事ですよね。

木村:そういったことをやり続けることで、感覚は磨かれて、それがやがては表現に出てくると思うのよ。

山本:そうですね、バレエに限らずすべてにおいてですね。

日常的に表現することに慣れていないのかなと思います。羞恥心を捨てれないから、歌って踊ってって言われてもできないし、泣いちゃう子もいる。だから踊りが、型をなぞる、になってしまうのかもしれません。

大石:心が裸になれないのかもしれないですね。

 
 

コンクールやバレエ団のあり方について思うことはありますか?

大石:よく思うのがコンクールの踊りについて、ポーズが大人びていて違和感があるな、ということです。

木村:個人的には子供は子供らしく踊ってほしいですね。

山本:衣装のチュチュも本来大人の体のラインを見せるためにできた衣装だから、子供が着ると違和感を感じるのかもしれませんね。そう言う事もバレエの歴史と全て直結しているんです。

大石:子供達の中でのバレエのイメージが違うように思います。 私たちの考えるバレエって、カンパニーで作品を作り上げていくというイメージなのですが、子供達の中では「バリエーションを上手に踊る」となっているようで、見えている物が全く違うんじゃないかなと思うんです。

山本:バレエ団と教室の差別化をしたほうがいいかなとは思います。 教室文化の名残でチケット買ってっていうのをやめないと、なかなか観客も育たないと感じます。バレエもエンタメです。 観客と相互関係をもっと上手くできないかなとは感じます。演目によってそれを見たい客層、年齢が違うはずです。映画やミュージカルのように違って良いと思うんです。 チケッティングの問題、著作権の問題、知的財産、文化庁の助成金のシステムを変えれないかとは思っています。

今回振り付けされているシニア作品 「MOIRAI」についてお聞きしたいです

大石:ギリシャ神話に伝わる3人の魔女がモイライといい、ローマ神話だとパルカイ。そこからアイデアを引っ張ってきました。 糸を紡ぐ人、糸を巻いていく人、断ち切る人、運命の長さと言うか。重いテーマをどうポジティブにするかがチャレンジだと思い、だから明るいというより、カラッとさせる方向で行った方がいいような気がして。魔女って言う題材って面白いじゃないですか。

木村:裕香さんみたいな人が日本のバレエ界をどんどん引っ張っていくのよ

山本:いい作品って、技量もあるけど、シナリオとセッティングで決まっちゃったりしますよね。細かい振りで決まらない、時代背景というか、どうやってそこにいるかで決まっちゃう。だって魔女って言われてだけで立ち方、目線が決まっちゃうわけでしょ。

大石:24分の作品です。一番作りづらいレンジなのですけど何を伝えられるかなと考えています。作品の長さって受け入れる国によって違って、ジョン(ノイマイヤーさん)がアメリカでニジンスキーを上演した時は、アメリカ人には作品が長くて短くしたりしました。

 
 

2週間くらいで作品を作り上げるって、プロのやり方ですね。でも今回は皆がプロではないですね

山本:プロだから楽ってことでもなくて、伝える事は同じだと思うんです。

大石:プロだと5分のソロなら3回のリハで本番ということもあります。よく踊れる人しかそう言うやり方はしませんが。やはりクオリティ的にもいいもの出そうと思ったら3回以上はあった方がいいですね(笑)。それでも準備期間が長ければ長いほどいいものが出来るといわけではなくて、体が覚えちゃうと良くない時もあります。

山本:新鮮さがなくなっちゃいますね。 踊りって瞬発力やリクションなので、体が覚えちゃうと、次はこれって、独り言を喋っているみたいになって、考えないで踊ることになっちゃうので。お稽古って、例えば1000人の劇場なら1000人に見られるつもりでお稽古が始められてるかって、じゃないと舞台と相違が出てくる。僕にとってはリハは約束事を交わす場所なのね、約束事を必ず守る中でから生まれるひらめき、可能性の場所なんです。

木村:この人を信じて全部曝け出す、裸になる、信頼関係よね。取り繕うといいものができないですね。

 
 

前回に続き、今回はチャイルドからシニア、KK ART PROJECTまでの作品を制作くださった山本先生、大阪を活動の拠点として宝塚の振り付や、クラスレッスンも教えていらっしゃる大石先生、今後の活躍もとても楽しみにしています。

 

KK INTERNATIONAL TOKYO

https://www.instagram.com/ballet.kkinternational/

公演情報

2023 summer

※詳細は決まり次第お知らせします


山本康介

@kosuke_apollon

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大石裕香

@yukao_ishi

https://www.instagram.com/yukao_ishi/

サンフランシスコバレエにてNEXT@90 Festivalで新たな大石先生のBOLEROが発表されます!



文・インタビュー / 村上智子


INTERVIEW

山本康介「自分が歌っているように踊って欲しい」

KK MAGAZINE vol.1 スペシャルインタビュー

2022.11.20

イギリス、バーミンガムバレエ団で長く踊ってきたダンサーとして感じている事、日本とは違うバレエ文化を経験し指導者として見えている世界。「お客さんに聴かせるように、自分が歌っているように踊って欲しい」。才能溢れる演出家、山本さんの考える今と少し未来についてのインタビュー。


来年1月に発表する(※1)KK ART PROJECTの作品を振り付けして頂いています。木村先生とは過去にも一緒に作品作りをされていますが、今回の作品についてお聞きしたいです。

山本:最初木村先生から、「9人ポワント1人バレエシューズで踊らせたいの」とお話しを頂き、常識に囚われない人だなと思いました(笑)。今回はネオクラシック作品で楽曲はドビュッシー、舞台では生演奏を予定しています。有名なクラシック曲、生演奏は子供達がいつか舞台で踊るためのアダプテーション的な事を考えました。

(※1)木村規予香がアーティスティックPDを務める若手ダンサーの世界観を発信するダンスプロジェクト

 
 

今回演出されているKK ART PROJECTは、若いダンサーや学生達のプロジェクトですが、山本先生からアドバイスはありますか?

山本:そうですね、もっとこうしたら良いのでは?と思う事に、ダンサーの感情表現についてがあります。本人の素の部分と感情を込める部分の両方が必要だと思います。素の部分とは、ただ自分でいる事、それが透明感だとも思います。それって集中力だと思うのですが、透明感はそこから出てくる物だと思っています。特に若い時は難しく考えてしまうのですが、素でいる事は、自分の理想に近づく事ではないと思います。なりたい事と綺麗に見える事が違う事に気づく客観性を持って欲しいのですが、バレエの中だけにいると難しいです。自分の歌をお客さんに聴かせるように、自分で歌うように踊って欲しいです。


舞台で生のオーケストラで踊る経験は子供達に貴重な経験になると思いますが、音楽性を豊かにする目的もあるのでしょうか?

山本:はい、プロになれば生の演奏で踊るので、より実践に近い環境が良いと思いました。それと、音楽性は生まれ持ってのものだと僕は考えています。もし備わっていなければ自分で認識し、どうすれば良いかを考える事が大切です。僕が考える音楽性は、気持ちの高揚感、自分のリズム感と音楽を一体化できることです。音楽ありきで作られたバレエ作品なら、作曲家に敬意を払うべきですし、少なくともテンポを理解するために楽譜は読めたほうが良いですね。演出家としては、指揮者などと対等に進める時は楽譜を使って進めていくこともあります。

 
 

例えば、コンテンポラリー作品は音取りが難しいように感じますが、音に合わせる、という事についてもお聞きしたいです。

山本:コンテンポラリーは小節やアクセントに合わせる事が重要な踊りもありますが、振付家によります。なんとなく音楽に合わせて踊る事もあるし、自分が楽器になって音楽に細かく合わせて踊らないといけない事もあります、振り付け家によります。

海外には素晴らしいコンテンポラリー作品が沢山あると思いますが、まだ日本で知られていない作品も多いと思います。ぜひ上演して欲しいです。

日本のバレエ団の将来について、また、新しいカンパニーについて、どの様に変化する事が重要なのでしょうか?

山本:日本にはバレエ団がたくさんありすぎると思います。それぞれの内容が伴っていれば意味がありますが、国からの助成金は少なくありませんから、どうしたらバレエ団が活動しやすくなるか考える必要があると思います。新しいカンパニーについては、身の丈に合っている事、出来ることから段階があって今がある事が重要です。

 
 

山本先生のお話から、日本と海外のバレエに対する考え方の違いがあるように感じます。考え方の違いはどのように影響しているのでしょうか?

山本:システム、考え方の違いが大きいです。バレエの素晴らしさとは何か?だと思います。日本はサーカスっぽいところがあります。上手な事が重要なのか?作られたものはバレエなのか?テクニックは表現する為にあるものです。その子の素質とテクニックは分けて考えないといけませんが、日本のバレエコンクールについてですが、審査員をすると難しいです。本来、古典作品はストーリーが必要だし、ヘアスタイルに関しても古典に沿ったスタイルである事も大切ですから。

 
英国バレエの歴史と魅力を解説、自身の来歴も掲載。バレエの世界をより深く理解できます。世界文化社(2020/3/19)

英国バレエの歴史と魅力を解説、自身の来歴も掲載。バレエの世界をより深く理解できます。世界文化社(2020/3/19)

山本先生が今日本で会ってみたいアーティストやコリオグラファーはいらっしゃいますか?

山本:寒川裕人さんです。僕が振付する、来年1月に上演の東京シティバレエ団「バランシン版火の鳥」に彼の映像を流す予定です。11月には東京都現代美術館で彼のエキシビジョンがあります。振付する火の鳥はネオクラシックになります。そろそろ僕は新しい事をやってもいいかと思っています。評価はそれぞれだと思いますが、なんでも変わる時は最初があります。

木村: 振付家の宝満くん、森ゆうきくんも会ってみたい方ですね。

山本先生と木村先生の考える新しい事についてもう少しお聞きしたいです。

木村:詩の朗読に合わせて踊るのはどうかしら?

山本:是非振付をしてみたいです。舞台から離れた所で、木村先生が踊るのもいいですね。

木村:ストーリーバレエも作りたいです。時間はかかりますが、日本のバレエ会に刺激を与えたいです。古典のストーリーを想像できる事も子供達がダンサーになる為に必要だと思います。

今後、海外の良い作品をもっと持ってきて欲しいと思います。山本先生だからこそできる作品も多いのではないでしょうか。

山本:海外の振付家のダンスを踊る事も大切ですが、僕は日本の振付家も大切にして育てたいです。公演数をまず増やしたい、日本のバレエ団が海外に持っていける作品を作らないといけないと考えています。共通の目的意識を持たないといけない。韓国や中国は国家を挙げて文化を推奨しているので、このままでは日本は文化的に置いていかれてしまいます。海外のものを持ってきて踊るカラオケバレエを辞めて、日本のスタイルを確立させたいです。

1月のKK ART PROJECT、シティの火の鳥、映像作品もとても楽しみです。詩の朗読で木村先生が踊る作品も、是非実現して下さい。

 

KK ART PROJECT

https://instagram.com/kkartproject20?utm_medium=copy_link

公演情報

2022.1.7 16:00〜@大井町きゅりあん小ホール

※詳細はWEBから

KK INTERNATIONAL

https://kk-ballet.com

@kosuke_apollon

https://instagram.com/kosuke_apollon?utm_medium=copy_link

東京シティバレエ団「トリプル・ビル/火の鳥(世界初演)」

https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000717.html

寒川祐人

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/the-eugene-studio/

2021.11.20~2022.2.23 @東京都現代美術館


文・インタビュー / 村上智子